第1 市町村の支給義務
1 公務災害補償等
消防の仕事は危険性が高く、公務上の災害が少なくない。公務災害補償制度は、消防団員に後顧の憂いなく活動してもらうために設けられた制度である。
市町村は、消防団員、水防団員又は民間人(以下「非常勤消防団員等」という。)が災害現場での防災活動等により死亡、負傷、又は疾病にかかった等の場合には、条例の定めにより、その者又はその遺族に対して損害を補償しなければならない(消防組織法第24条第1項、水防法第6条の2第1項、消防法第36条の3第1項及び第2項、水防法第45条、災害対策基本法第84条第1項・原子力災害対策特別措置法第28条第1項)。
また、消防団員と水防団員又はその遺族の福祉に関して必要な事業を行うよう努めなければならない(消防組織法第24条第2項、水防法第6条の2第2項)。
2 退職報償金
退職報償金制度は、多年、職務に携わって退職した消防団員の労苦に報いるために設けられた制度である。
市町村は消防団員が退職した場合には、条例の定めにより、その者(死亡による退職の場合には、その者の遺族)に退職報償金を支給しなければならない(消防組織法第25条)。
第2 消防基金の役割
消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)は、市町村の消防団員等公務災害補償及び消防団員退職報償金の支給の的確な実施に資するため、消防団員等公務災害補償責任共済事業及び消防団員退職報償金支給責任共済事業を行い、併せて消防団員等福祉事業等を行うことにより、消防団員等の消防活動、水防活動その他の防災活動に係る環境を整備することに寄与することを目的としている(消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律(以下「責任共済法」という。)第14条)。
第3 市町村と消防基金の関係
1 責任共済契約
市町村は、消防団員等の公務災害補償及び退職報償金の支給を的確に実施するために消防基金又は指定法人との間に、総務省令で定めるところにより、消防団員等公務災害補償責任共済契約(以下「災害共済契約」という。)及び消防団員退職報償金支給責任共済契約(以下「退職共済契約」という。)を締結するものとする(責任共済法第3条、第4条)。
(1) 災害共済契約
災害共済契約は、市町村が消防基金に掛金を支払うことを約束し、消防基金が当該市町村に対して非常勤消防団員等に係る損害補償に要する経費を支払うことを約束する契約である(責任共済法第2条第1項)。
(2) 退職共済契約
退職共済契約は、市町村が消防基金に掛金を支払うことを約束し、消防基金が当該市町村に対して消防団員退職報償金の支給に要する経費を支払うことを約束する契約である(責任共済法第2条第2項)。
2 消防団員等福祉事業
消防基金は、災害共済契約を締結している市町村に代わって、被災団員及びその遺族の福祉に関して必要な事業を行うように努める(責任共済法第13条第1項)。
また、災害共済契約を締結している市町村の消防団員等の公務災害を防止するために必要な事業及び消防団員等が自家用車等を災害活動に使用したことにより損害を受けた場合の見舞金の支給を行うように努める(責任共済法第13条第3項)。
第4 掛金の支払
消防基金と災害共済契約及び退職共済契約を締結している市町村は、毎年度政令で定められた額の掛金を消防基金に支払う(責任共済法第7条第1項、同法施行令第4条第1項、第2項、第3項)。
なお、掛金の支払期限は、各年度について、当該年度の4月末日である(責任共済法第7条第2項、同法施行令第6条第1項)。
第5 市町村の請求
消防基金と災害共済契約及び退職共済契約を締結している市町村は、消防団員等公務災害補償に要する経費及び退職報償金の支給に要する経費を消防基金に請求する(責任共済法第6条第1項、第2項、同法施行令第1条)。
第6 消防基金の支払
消防基金は、災害共済契約及び退職共済契約を締結している市町村から、消防団員等公務災害補償に要する経費及び退職報償金の支給に要する経費の請求があった場合は、政令で定めるところにより算定した額を支払わなければならない(責任共済法第6条第1項、第2項、同法施行令第2条、第3条第1項、第2項、別表)。
なお、消防基金は、当該経費を支払う場合において必要があると認めるとき又は支払った後においてその支払額に錯誤があると認めるに至ったときは、市町村長又は管理者に対して説明を求め、報告をさせ、若しくは当該消防団員等公務災害補償若しくは当該消防団員退職報償金の支給に係る帳簿書類の提出(オンラインによる提出も可)を求めることができる(責任共済法第11条第1項)。