新宮市消防団長
中 谷 健 兒
新宮市は、和歌山県、奈良県及び三重県の県境が接する紀伊半島の東南部に位置しており、太平洋に面し、温暖で高温多湿な気候風土により豊かな水資源と樹木育成に恵まれた自然環境の中にあります。
歴史的に古くは、神武天皇東征のコースにあって、日本書紀などには熊野神邑(くまのかむのむら)とよばれ、熊野信仰の中心都市として栄え、中世には、熊野参詣の熊野三大社のひとつ熊野速玉大社の門前町として発展し、明治以降は、熊野材の生産地、製紙業や製材業で繁栄した歴史を持ち、今日まで熊野地方の行政、経済、文化、教育の中心都市として発展してきました。
世界遺産登録された「紀伊山地の霊場と参拝道」の熊野古道「大雲取超え」「小雲取超え」「高野坂」や川の参詣道「熊野川」など、熊野の海や山や川の織りなす豊かな大自然があり、文化面では、佐藤春夫や中上健次、東くめ、西村伊作などの多くの文化人を輩出し、また、秦の始皇帝の命を受け不老不死の霊薬を求めて熊野に渡来した徐福伝説による中国や台湾をはじめとした多種多様な異文化との交流なども活発に行われています。
新宮市消防団は、明治22年に新宮町義勇消防組織として結成され、明治28年に消防組規則交付に伴い、新宮消防組に名称を変更。昭和14年には警防団令の交付により新宮市警防団となった後、昭和22年に現在の新宮市消防団に名称を変更し、今日まで様々な消防団活動を行っております。
消防団規模としましては、令和5年4月1日現在、1本部、11分団、団員数292名で構成され、地域防災の要として、日々、市民の安心安全の確保に努めております。
私たち消防団が活動する災害現場は、一般の労働作業環境と異なり、身体的な負担や危険が伴います。そのような過酷な災害現場でも団員個々の能力を十分に発揮するためには、一人ひとりが健康であることが第一と考え、当市消防団では、令和6年2月18日に消防団員等公務災害補償等共済基金より健康運動指導士の杉浦資史氏及び川村護氏を講師にお招きし、公務災害防止策について健康面からアプローチする「消防団健康づくりセミナー」を開催し、消防団員約100名が講習を受講しました。
セミナーでは、杉浦講師より、椅子に座って行うストレッチや、タオルを使用しての筋力強化等、日頃使い切れていない体の部位の運動について簡単に、短時間で行える方法を実技も含めてお話ししていただきました。
また、体を使って左右対称の動きを実施する運動では、中々うまく出来ない団員も多数おり、会場からは大きな笑い声もあり、参加した団員は積極的に楽しみながら受講していました。
セミナー終了後のアンケート調査では、「楽しく受講できた」「来年もしてほしい」「日常の生活で今回の運動を取り入れて行きたい」等の意見が多数あり、健康増進に役立つ知識や運動実技の方法を学ぶことができ非常に有意義なセミナーとなりました。
今後、起こると言われている東南海・南海トラフ大地震等の大規模災害に立ち向かうために、日々の訓練は重要でありますが、まずは自身の健康が一番であります。
全国的にも消防団員の高齢化が進んでおり、当市消防団も同様の問題を抱えているところであります。高齢化による健康問題は、団員自らが日々の生活の中で身体のケアを行い、健康を意識していく必要があります。
今回のセミナーがそれら問題解消に繋がる大きな手段であったことは言うまでもありません。
「健康なくして街を災害から守ることはできない」
この言葉を胸に、地域防災の要として、また健康で災害に強い「災強部隊」として、引き続き消防団活動に取り組んでまいります。